
「お墓を継ぐ人がいない」「子どもに負担をかけたくない」などの理由から、
墓じまいを選ぶ方が年々増えています。
さらに墓じまいを考える流れから、海洋散骨や樹木葬といった
新しい葬儀の形にも注目が集まっています。
はたしてそれは、ご先祖さまにとって、また子孫である私たちにとって、
幸せな選択なのでしょうか。
新刊『幸せな先祖供養 墓じまいの前にやること』の著者であり、
先祖供養の専門家である田中里奈さんは、
「海洋散骨はおすすめしない」と明言します。
その理由について、また墓じまいでは何を優先すべきなのか、
先祖供養の重要性に関しても、田中さんにお話を伺いました。
*月刊アネモネ2026年9月号では、ご先祖さまと潜在意識の関係性を見ながら、先祖供養の大切さを田中さんにお話しいただいています。ぜひ併せてお楽しみください。
取材・文◎千田洋子 編集◎アネモネ編集部
先祖供養の専門家
田中里奈さん
Profile
たなか・りな◎東日本大震災をきっかけにスピリチュアルな道へと導かれ、霊視カウンセラー、仏師、東洋占術家として活動。コロナ下の影響で自己破産するも、そこから先祖供養のやり方と在り方を学んで実践すると、すぐに V 字回復。その経験をもとに、先祖供養の専門家として、先祖供養と墓じまいの個人相談や、先祖供養の大切さを伝える講座を持つようになる。
「墓じまい」は終わりではなく、新しい供養の始まり
——田中さんは、講座で先祖供養の大切さをお伝えする一方で、墓じまいに関するご相談にも応じているそうですが、「墓じまい」を選ぶ方が増えているいまの流れをどのように見ていますか?
田中さん(以下、敬称略) 遠方にお墓があったり、後継者がいなかったりと、それぞれの事情があり、核家族化が進んだ現代では、管理が難しくなってしまうのは仕方ないこと。 ですから墓じまいそのものを否定しているわけではないんですね。
私がお伝えしたいのは、「お墓をなくすこと」と「ご先祖さまとのつながりをなくすこと」は、まったく別の話だということです。
先祖供養のご相談を受ける中で、家族の不和、お金の問題、仕事の停滞など、人生のさまざまな悩みを抱える方々に出会ってきました。
その多くに共通していたのが、お墓が放置されていたり、ご先祖さまへの祈りが途絶えているということでした。
墓じまいは、ご先祖さまとの関係を終わらせることではありません。
お墓を閉じて、新しい供養に切り替える、始まりのタイミングです。
これからも感謝と祈りを届けるために、どのような供養を実践すれば、ご先祖さまとのつながりを保てるのかを知っていただきたいのです。
——お墓が放置され、ご先祖さまへの祈りが欠けていると、人生で悩みを抱えるのはなぜなのでしょうか。供養を続けることに、どのような意味があるのでしょう?
田中 私は、ご先祖さまはいつも子孫の幸せを願い、応援してくださっている存在だと考えています。
でも、お墓が放置されたままになっていたり、ご先祖さまへ感謝を伝えることを忘れてしまうと、そのつながりが少しずつ弱くなり、本来受け取れるはずの応援のエネルギーも届きにくくなってしまいます。
先祖供養とは、ご先祖さまの冥福を祈り、感謝を伝えること。
その積み重ねによって、ご先祖さまとのつながりが整い、私たち自身の心も自然と落ち着いていきます。
実際に、講座を受講した方たちからは、「家族関係が改善した」「仕事の流れが変わった」「長年の問題が解決した」といったご報告をいただいています。
もちろん、先祖供養だけですべてが解決するわけではありませんが、ご先祖さまを敬い感謝を伝えることで、意識や行動が変わり、人生が少しずつ良い方向へ動き始める、そのきっかけになることは確かです。
ご先祖さまとのつながりを取り戻すことは、自分の人生を整えることにつながるのですね。
海洋散骨は“祈りの拠点”を失うことに
——最近、注目を集めている海洋散骨を、田中さんはおすすめされていないそうですね。海洋散骨は自然に還るというイメージがあり、お墓に縛られない自由さも、いまの風の時代にあっている気がするのですが、なぜダメなのでしょうか?
田中 おっしゃる通り、海洋散骨は「自然に還れる」「お墓を持たなくて済む」「自由で心地いい」という好イメージを持つ方が多いです。
また、ご家族に負担をかけたくないという優しさから、生前にご本人が選ぶケースも少なくありません。
そのお気持ちは理解できますが、海洋散骨は供養という観点が抜け落ちてしまっているのです。
日本では古くから、お墓は故人の住まいであり、子孫が感謝を伝える場所として大切にされてきました。
お盆やお彼岸になると、ご先祖さまは遺骨を拠り所として子孫のもとへ戻り、祈りの思いを受け取ります。
つまり、遺骨は単なる「骨」ではなく、ご先祖さまにとってはこの世へ戻るための拠り所、子孫にとっては祈りを届ける拠点なのです。
ところが海洋散骨では、遺骨は細かく砕かれて海へ撒かれ、潮の流れとともに広い海原へ拡散し、たちまち所在がわからなくなります。
ご先祖さまと自分とをつなぐ、大切な拠点を失うことになるわけです。
私たちはたくさんのご先祖さまが命をつないでくれたおかげで、いま生きています。
ご先祖さまは人生を見守り続けてくれる、いちばんの応援団です。
そうしたご先祖さまとの重要なつながりが絶たれてしまうことを、私はいちばん危惧しています。
ご先祖さまも私たちも困らない墓じまいとは
——お墓に代わるものとして「樹木葬」や「納骨堂」も広がってきていますが、どのように考えればよいでしょうか?
田中 墓じまいをした後も、何らかの形で祈りの拠点を持つことが理想的です。
その選択肢としてあがるのが、樹木葬、納骨堂での埋葬・供養ですが、大切なのは「遺骨がきちんと管理されているか」という点。
ご先祖さまにとって自分の居場所が明確であり、子孫にとっても「ここへ来れば会える」という祈りの場所が保たれるからです。
樹木葬でも納骨堂でも、きちんと個別に遺骨が管理され、ご家族が気軽にお参りできる環境であれば、現代の供養の形として良い選択だと思います。
供養の仕方は時代とともに変わっても、「ご先祖さまを大切に思う心」は変わらないことを私は願います。

——墓じまいを考えている方々へアドバイスをお願いします。
田中 多くの方のご相談に乗ってきた私が思うのは、ご先祖さまも後に続く子孫の皆さんも困らない、調和の取れた形で墓じまいをしていただきたいということです。
日本には古くから、ご先祖さまに感謝し、その幸せを祈る文化が受け継がれてきました。
ご先祖さまが子孫の幸せを願い、子孫はご先祖さまを供養する。
その循環が、日本人の精神文化の土台、いわば“背骨”だったのではないでしょうか。
けれど現代では、その文化が少しずつ失われつつあります。
墓じまいも海洋散骨も「管理が楽だから」「費用が安いから」「イメージがいいから」という理由だけで決めてしまうと、本当に大事なものを失ってしまう可能性があります。
お墓を守ることが難しい時代だからこそ、供養を終わらせない方法があることを知っていただきたいのです。
これをお読みの方の中には、すでに海洋散骨をなさった方がいるかもしれませんね。
故人の希望を叶えるのが最善と信じ、それを選択されたのは愛情があるからこそ。
ですから、決して悔やむことはありません。
いちばん大切なのは天へ還った方々を敬い、感謝の気持ちを持ち続けることです。
たとえ海洋散骨された後であっても、たとえば、お家のどこかに祈りのスペースを設けるなど、ご先祖さまとのつながりを整えて祈りを届けることは可能なのです。
著書『幸せな先祖供養 墓じまいの前にやること』では、ご先祖さまとのつながりを取り戻すために、簡易家系図の作り方や、ご先祖さまへ感謝の祝詞をあげる先祖供養の方法をご紹介しています。
実践することで、ご先祖さまとの絆を取り戻すことができ、ご自身の心も整います。
また、樹木葬や納骨堂のタイプ、墓じまいや移転の手順なども本書でお伝えしています。
お墓の問題に取り組んでいる方、ご先祖さまとの向き合い方を知りたい方は、ぜひ手に取ってみてください。
墓じまいをすることは時代の流れとして受け入れながらも、祈りまで終わらせてしまわないことが、とても大切だと思います。
一度立ち止まり、考えるきっかけなれば嬉しいです。
『幸せな先祖供養 墓じまいの前にやること』/田中里奈 著/ビオ・マガジン/1,540円
人生のトラブルがご先祖さまとのつながりを取り戻すことで解決した著者。自身が実践した先祖供養の実践法として、具体的な簡易家系図の作り方、朝晩唱える祝詞の文言について、詳しく伝えています。同様の先祖供養を実践して、人生が大きくシフトした方々の体験談も多数紹介。さらに、いま多くの人が関心を寄せる墓じまいについて、ご先祖さまとのつながりという視点から解説しています。永代供養の意義、納骨堂や樹木葬、海洋散骨など、基本的なことが理解できます。ご先祖さまとのつながりを取り戻したい方、人生がなぜか上手くいかないと感じている方に、ぜひ読んでいただきたい一冊です。
先祖供養の専門家
田中里奈さん
Profile
たなか・りな◎東日本大震災をきっかけにスピリチュアルな道へと導かれ、霊視カウンセラー、仏師、東洋占術家として活動。コロナ下の影響で自己破産するも、そこから先祖供養のやり方と在り方を学んで実践すると、すぐに V 字回復。その経験をもとに、先祖供養の専門家として、先祖供養と墓じまいの個人相談や、先祖供養の大切さを伝える講座を持つようになる。
https://tanakarina.net/













